古代哲学とは何か

ピエール・アド/著
室井麗子/翻訳

出版年月:

ページ数:512

ISBN:9784491043852

5,500 円(税込)

だからこそ今すぐに、この「道」を、この「素晴らしい道」を、進むよう決断しなければならない。


古代人は哲学を生き方としてとらえた。古代の哲学にとっては、哲学的な生き方の選択が、最も本質的なことであった。そのような生は、多大な努力を想定しており、その努力は毎日更新されねばならない。

古代哲学とは何か?


この問いに教義や体系の歴史で答えてきたのが大学の伝統であった。しかし、ピエール・アドは、まったく新しい答えを与える。
ミシェル・フーコー後期思想の核、「生き方としての哲学」の思想史を導き出し、その系譜を描いたフランスの哲学者、ピエール・アドの代表作を邦訳。

凡例
序文 
第Ⅰ部 プラトンによる哲学者の定義とその先行者たち
第1章 哲学以前の哲学 
ギリシアの初期の思想家たちのヒストリア
パイデイア 
紀元前五世紀のソフィストたち 

第2章 「哲学する」という観念の出現 
ヘロドトスの証言 
哲学的な活動、アテナイの誇り 
ソフィアの概念 

第3章 ソクラテスという人物像 
ソクラテスという人物像 
ソクラテス的な無知と、ソフィスト的な知への批判 
「個人」から「個人」への呼びかけ 
ソクラテスの知―道徳的意図の絶対的価値 
自己への配慮、他者への配慮 

第4章 プラトンの『饗宴』における哲学者の定義 
プラトンの『饗宴』 
エロス、ソクラテス、そして哲学者なるもの 
イソクラテス 

第Ⅱ部 生き方としての哲学
第5章 プラトンとアカデメイア 
プラトンのアカデメイアにおける、生き方としての哲学 
教育的プロジェクト
ソクラテスとピュタゴラス 
政治的意図 
アカデメイアにおける人間形成と探究 
生についてのプラトン主義的選択 
霊的な修練 
プラトンの哲学的言説 

第6章 アリストテレスと彼の学園 
「観想的」生き方 
「観想的」生の様々な次元 
哲学的言説の諸限界 

第7章 ヘレニズムの諸学派 
一般的な特徴 
ヘレニズム時代 
オリエントの影響? 
諸々の哲学学園 
一致点と相違点―生き方の選択の優先性 
一致点と相違点―教育方法 
キュニコス哲学 
ピュロン 
エピクロス主義 
経験と選択 
倫理学 
自然学とカノーン 
諸修練 
ストア哲学 
基本的な選択 
自然学 
認識論 
道徳論 
諸修練 
アリストテレス主義 
プラトンのアカデメイア 
懐疑主義 

第8章 ローマ帝国時代の哲学諸学派 
一般的な特徴 
新たな諸学派 
教育方法―注解の時代 
生の選択 
プロティノスとポルピュリオス 
生の選択 
自己の諸次元と哲学的言説の諸限界 
プロティノス以降の新プラトン主義と神通術 
哲学的言説と諸伝統の調和への意志 
生き方 

第9章 哲学と哲学的言説 
哲学と、哲学的言説の両義性 
霊的な諸修練 
前史 
身体の修練と魂の修練 
自己への関係と、私への集中 
宇宙との関係と、自己の拡張 
他者との関係 
賢者 
賢者の像と生の選択 
賢者についての哲学的言説 
世界の観想と賢者の観想 
結論 

第Ⅲ部 断絶と連続性―中世と近現代
第10章 啓示哲学としてのキリスト教 
自らを哲学として定義するキリスト教 
キリスト教と古代哲学 

第11章 哲学の古代的概念の消滅と再出現 
再説―キリスト教と哲学 
神学の侍女としての哲学 
理性の技術者たち 
生き方としての哲学という考え方の永続性 

第12章 論点と視点 

訳者あとがき 
原注 
参考文献 
事項索引 
人名・著作名索引 

ピエール・アド(Pierre Hadot)
1922 年にパリで生まれる。戦時中の数年間を除き、幼少期から青年期までをランスで過ごし、同地の神学校で教育を受ける。1944 年に司祭に叙階され、1944 年から45 年にかけて神学校などで哲学を教える。その後、パリのカトリック学院、ソルボンヌならびに高等研究実習院(EPHE)で、神学、哲学、社会学などを学ぶ。特に、キリスト教新プラトン主義者マリウス・ウィクトリヌスの研究に取組み、ウィクトリヌスの校訂本作成への参加を通して文献学と歴史学の研鑽を積む(1968 年に同研究で国家博士論文を提出)。1949 年に国立科学研究センター(CNRS)の研究員に、1964 年には高等研究実習院のディレクターに就任。精緻な文献学研究に基づき、特に、プロティノスの神秘主義的論考やマルクス・アウレリウスを研究。近・現代哲学にも精通し、フランスにおいてウィトゲンシュタインに先駆的に注目したことでも知られる。1982 年には、ミシェル・
フーコーの推挙によりコレージュ・ド・フランス教授に就任。1991 年にコレージュ・ド・フランスを退職した後は一層精力的に執筆活動に取り組み、主著の多くを執筆している。2010 年没。
主著に、『プロティノス、あるいは視線の純化Plotin, ou, La simplicité du regard』(Plon,1963)、『霊的修練と古代哲学Exercices spirituels et philosophie antique』(Études augustiniennes,1981)、『内なる砦La citadelle intérieure』(Fayard, 1992)、『生き方としての哲学――J. カルリエ、A. I. デイヴィッドソンとの対話La philosophie commemanière de vivre: Entretiens avec Jeannie Carlier et Arnold. I. Davidson』(Albin Michel,2001=小黒和子訳、法政大学出版局、2021 年)、『イシスのヴェールLa voile d’Isis』(Gallimard, 2004=小黒和子訳、法政大学出版局、2020 年)、『ウィトゲンシュタインと言語の限界Wittgenstein et les limites du langage』(J. Vrin, 2004=邦訳:合田正人訳・古田徹也解説、講談社、2022 年)、『生きることを忘れるなかれN’oublie pas de vivre』(Albin Michel, 2008=邦訳:村松正隆訳、法政大学出版局、2026 年)などがある。

室井麗子(むろい・れいこ)
東北大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。現在、岩手大学教育学部准教授。
主著・主論文に、『記憶と想起の教育学――メモリー・ペダゴジー、教育哲学からのアプローチ』(分担執筆、勁草書房、2022 年)、『教育と政治を編み直す――規範的教育学の再構築』(分担執筆、勁草書房、2026 年)、Literacy and tactility: An experience of writing in Kuzuhara Kôtô Nikki( Kuzuhara Kôtô’s diary)(Education Philosophy and Theory,Vol.54, No.9, 2022)などがある。