マラドーナ独白 -1986年のメキシコW杯-

ディエゴ アルマンド マラドーナ/著

出版年月:

ページ数:316

ISBN:9784491035444

1,980 円(税込)

「俺がイングランド相手にゴールを2本決めたことを、あれからどのアルゼンチン人も手にしたことのないW杯を高々と掲げたことを、誰も忘れないだろう。だから、改めてあの大会について話をしようと思う。これは俺の真実であり、俺の記憶だ!」


「みんな、後ろを、ピッチのほうを見たくなかったんだと思う。ゴールを無効にされるのが怖くて。俺のところに来たエル・チェチョは訊いてきた。『手でやったんだろう? 手でやったんだよな?』俺は答えた。『口をつぐめ。俺は喜びつづけるから』。俺はすぐに親父と義父がいる観客席に目を向けた。俺が拳を突き上げて見せると、親父たちも同じように応えてくれた。ゴールを取り消されるんじゃないかとずっと不安だったが、結局無効にはされなかった」

「あのプレーはエンリケのパスから始まった。そう、冗談じゃなく、エンリケのパスがベースだったんだ。もし50センチでもパスがずれていたら、どうなっていただろう? ああいう形でボールを受けられず、ああいう形で体を翻せずに、ベアズリーと哀れなリードをかわすことはできなかったかもしれない。あの一度の体の回転で、俺は二人を抜いた」

「俺はブッチャーの気配を右後ろに感じた。うなじに息がかかるような気さえした。バルダーノとブルチャガの姿も目にはいった。左にボールをパスしろと要求しているのがわかった。でも、やれるかっていうんだ! 自陣からここまでやっと持ってきたボールなのに……」

「のちに、フェンウィックのインタビュー記事を見せられたことがある。前半にもらったイエローカードという制約があったので、ファウルすべきかどうか、そうなれば退場だがそれでいいか、一瞬迷ったのだという。そして心を決めたとき、すでにボールはゴールに吸いこまれていた」

「そして俺たちは、また西ドイツを迎えた。そりゃあ、彼らのほうが経験に勝っていたさ。1982年のスペイン大会では決勝を戦い、今大会では、やはり決勝戦のことをよく知っているベッケンバウアーが監督を務めている。そして今彼らの前にいるのは、反逆児の集団だった」

「ほかの何とも比べられない、俺のサッカー人生で最高の瞬間だった」

「俺はボックス席に行き、カップを受け取った。いや、渡したのはアヴェランジェじゃない。俺がそこに到着したちょうどそのとき、通路でメキシコ大統領と行き会い、彼から渡された。誰にもらったかは重要じゃなく、もらったということが俺には大事だった。俺はトロフィーをわが子みたいに持った。最初は高く掲げ、そのあとこうして胸に抱いた。そう、わが子みたいに」

「俺たちは並はずれている。それは確かだ。そしてそれは性格と大きく関係している。メッシは俺よりはるかに穏やかに物事をとらえる。それは彼が頭の中で、スローモーションでさまざまな決断をするからだ。一方、俺は稲妻級だ。これは性格の問題だよ」

「今ならメッシは、W杯ロシア大会に行って、カップを掲げることができるだろう。彼に言ってやれるのは、個人でその準備をしろ、ということだけだ。俺がメキシコ大会の前にダルモンテ教授とやったように、自分でロシア大会のために準備をするんだ。」

……神の手、五人抜き、W杯優勝――
サッカー界の英雄が、伝説となったメキシコW杯で起こったすべてを語り尽くす。
そして、メッシとアルゼンチンの未来についても。
サッカーを愛するすべてに人に捧げる、決定的自伝!

序文
あのゴールについてディエゴがどう話すか楽しみだ 1

プロローグ
みんなが言うほど、俺はおかしくなかったよな? 16

第1章 誰も望まなかった選手選抜 21
第2章 あの何度かのミーティングでチャンピオンが生まれた 69
第3章 マラドーナをぶっつぶせ 93
第4章 マンマ・ミーア 121
第5章 FIFAと対決する 68
第6章 メキシコでラプラタ川を渡る 163
第7章 決勝トーナメント 185
第8章 マラドーナ対マラドーナ 225
第9章 そうとも、世界一だ 237
第10章 次のチャンピオン 265

ディエゴ アルマンド マラドーナ

1960年アルゼンチン、ブエノスアイレス生まれ。史上最高の選手としてその名を挙げる者も多い、伝説のサッカープレーヤー。アルヘンティノス・ジュニオルスを皮切りにボカ・ジュニオルス、FCバルセロナでプレーしたのち、SSCナポリに移籍し、セリエAとUEFAカップで優勝を果たした。アルゼンチン代表としてもユース時代から活躍(1979年Wユース選手権日本大会で優勝)、1986年W杯メキシコ大会でフル代表チームを優勝に導いたほか、1990年イタリア大会では準優勝し、1982年スペイン大会、1994年アメリカ大会にも出場した。