ゆ~っくり座って健康に!60歳からはじめるエキセントリック体操

野坂和則[監修]
稲見崇孝・桂良寛[著]

出版年月:

ページ数:128

ISBN:9784491047683

1,480 円(税込)

1回5秒! ゆ~っくり、力を入れている筋肉を伸ばす体操で筋力UP!

NHK『ガッテン』で話題のトレーニングがこの1冊に!

「椅子座り」「かかと下げ」「片ひざ押し」「胸伸ばし」「お腹伸ばし」etc…

すべての動きを動画で確認できる!



本書で紹介するエキセントリック体操(トレーニング)は、聞き慣れない言葉かと思いますが、運動生理学やスポーツ科学と呼ばれる分野で培われたエビデンスを元にした運動・トレーニングの方法です。一般に運動やトレーニングと聞くと「若者向け」のような印象を持たれることもあるかもしれませんが、エキセントリック体操の特徴は今までの体操・運動・トレーニングの約半分の動きで高い効果を得られる点にあり、体力に自信のない方や運動が苦手な方の健康づくり・体力づくりに貢献します。これまでの約半分の動き、言い換えると「楽」な動きで高い効果が得られることは、運動を継続するために重要な要素となります。飽食や運動不足の影響により、健康が害されることもある現代において、10年先、20年先にも元気で健康な身体を維持していくために、本書を手に取られた方はもちろん、本書を手に取られた方の大切な人に役立てられることを願っています。

1 「エキセントリック体操」の考え方
 「エキセントリック」の本来の意味は「変な」とか「普通でない」で、習慣や行動などが標準的な在り様から外れている時に用います。一方、運動スポーツ科学では、「エキセントリック」は収縮している筋肉が伸ばされる筋活動を表します。重いダンベルをゆっくりと下げる、階段をゆっくり下りる運動はその典型的な例です。

 エキセントリック運動(例えば、階段下り)は、短縮性筋活動が主となるコンセントリック運動(例えば、階段上り)に比べ楽です。これは、コンセントリック運動に比べて代謝的負担が少ないためです。階段を下る時には、上りほどハアハアと息切れしないのは、使っている筋肉での酸素の必要性が低いため、多くの酸素を筋肉に送る必要がなくなり、心拍数が上がらないからです。
 また、エキセントリック筋活動で出せる筋力はコンセントリック筋活動で出せる筋力よりも20%程度大きいのです。例えば、15㎏くらいのダンベルをゆっくり下ろすことができれば、10㎏のダンベルを持ち上げることも可能です。これによりエキセントリック運動は楽に感じられます。

 

2 「エキセントリック体操」の効果
 本書で紹介するエキセントリック体操では、日常生活に関係する歩行能力やバランス能力が向上すること、悪玉コレステロールが減少すること、インスリン感受性が高まるなど、様々な効果が明らかとなっています。

■エキセントリック運動 3つの効果
①体力に対する効果
 エキセントリック運動を継続的に行っていくことによって、筋力、筋持久力、パワーが向上し、歩行能力やバランス能力も向上します。
②健康に対する効果
 エキセントリック運動によりインスリンの感受性が良くなり、血液中の中性脂肪や総コレステロールの値も下がります。「エキセントリック運動は良薬」です。
③脳に対する効果
 エキセントリック運動によって脳がより刺激され、認知機能も高まる可能性があります。また、認知症の原因になる様々な疾患の予防にもなります。

 


3 エキセントリック体操のやり方
 柔軟性を高めるために行うストレッチングでは、リラックスして力の抜けた筋肉を伸ばします。一方、力が入っている筋肉を伸ばすのがエキセントリック運動です。脚、腕、体幹の筋肉を刺激していきましょう。どの運動を行うにも「ゆっくり」がポイントです。

4 写真と動画で誰でも簡単にできる
 本書では自身の体力レベルに合わせて実施できるよう、主として負荷を基準に初級、中級、上級、応用編に章を分けています。初級編の体操は4種類のみです。気がついた時に、いつでもどこでも実施できる内容を厳選していますので、毎日の実施でより高い効果が得られるでしょう。初級編で効果が得られてきた、もしくは初級編では物足りない、という方は級を進めていただくことで、さらに高い効果の獲得につながります。まずは初級4種類を継続し、エキセントリック体操を習慣にしていきましょう。その際、紙面の二次元コードから、動画を見ることもできます。

■椅子座り

この本に紹介されている体操は、毎日行って良いものばかりです。第2章初級編で紹介している椅子座りやかかと下げ、胸伸ばし、お腹伸ばし、4つの体操を1日5〜10回、毎日行うことができれば理想的です。特別な機器や道具がなくても1人で実施可能な体操ばかりですので、可能であれば無理のない範囲で第3章中級編、第4章上級編へとチャレンジしてみてください。繰り返しになりますが、エキセントリック体操も他の体操、筋力トレーニングと同じく継続することが重要です。「継続は力なり」と言いますが、日常生活の中で日々、エキセントリック体操を実施していくことは、間違いなく5年後、10年後、20年後に大きな違いとなって現れるはずです。

はじめに
―科学的な根拠に裏付けされたエキセントリック体操 2


第1章 エキセントリック体操の基礎知識

健康寿命の重要性 10
筋肉が健康にとって大切な理由 12
筋肉を鍛えるにはどうするか? 14
力が入っている筋肉を伸ばす 16
エキセントリック運動の効果①:体力に対する効果 18
エキセントリック運動の効果②:健康に対する効果 20
エキセントリック運動の効果③:脳に対する効果 22
エキセントリック運動のやり方 24


第2章 初級編[エントリー] 毎日行う4つの体操

基本となる動き 28
エキセントリック体操8カ条 30
1 椅子座り:太ももの前とお尻のトレーニング 32
2 お腹伸ばし:腹筋のトレーニング 34
3 かかと下げ:ふくらはぎのトレーニング 36
4 胸伸ばし:胸と二の腕のトレーニング 38


第3章 中級編[ベーシック] 基本となる12の体操

1 足幅を狭くした椅子座り:太ももの前と内側、お尻のトレーニング 44
2 片ひざ押し:足を上げる筋肉のトレーニング 46
3 フロントランジ:太ももの前とお尻のトレーニング 48
4 サイドランジ:太ももの前とお尻のトレーニング 50
5 片ひざ閉じ:太ももの外側のトレーニング 52
6 片ひざ開き:太ももの内側のトレーニング 54
7 かかと下げ:ふくらはぎのトレーニング 56
8 つま先押し:すねのトレーニング 58
9 片ひじ伸ばし①:腕の力こぶのトレーニング 60
10 片ひじ曲げ①:二の腕のトレーニング 62
11 片ひじ伸ばし②:腕の力こぶのトレーニング 64
12 片ひじ曲げ②:二の腕のトレーニング 66


第4章 上級編[チャレンジ] 挑戦したい9つの体操

1 体育座りからのお腹伸ばし:腹筋のトレーニング 70
2 寝た姿勢からのお腹伸ばし:腹筋のトレーニング 72
3 お尻下げ:太ももの裏とお尻と背中のトレーニング 74
4 四つんばいでの胸伸ばし:胸と二の腕のトレーニング 76
5 バランススクワット:太ももの前とお尻のトレーニング 78
6 片足スクワット:太ももの前とお尻のトレーニング 80
7 斜めランジ:太ももの前とお尻のトレーニング 82
8 ジャンプスクワット:太ももの前とお尻のトレーニング 84
9 ジャンプ片足スクワット:太ももの前とお尻のトレーニング 86


第5章 応用編[バリエーション] やってみたい11の体操

GET A HINT:生活に運動を入れるヒント 90
買い物袋:腕の力こぶのトレーニング 92
階段下り:太もものトレーニング 94
ペア(2人一組)もしくは親と子・孫とのトレーニングも楽しい 96
1 ペアで片ひじ伸ばし:腕の力こぶのトレーニング 98
2 ペアで胸伸ばし:胸と二の腕のトレーニング 100
3 ペアでお腹伸ばし①:腹筋のトレーニング 102
4 ペアでお腹伸ばし②:腹筋のトレーニング 104
5 ペアで片ひざ押し:股関節のトレーニング 106
6 ペアでローイング:背中のトレーニング 108
7 ペアで椅子座り:太ももの前とお尻のトレーニング 110
8 ペアでかかと下げ:ふくらはぎのトレーニング 112
9 ペアでつま先押し:すねのトレーニング 114
10 ペアでひざ伸ばし:太ももの裏のトレーニング 116
11ペアでお尻下げ:太ももの裏とお尻のトレーニング 118

レベル別の体操と体の部位との関係 120

おわりに 122
監修・著者紹介 125 
モデル・協力 126

野坂和則
オーストラリア エディスコーワン大学教授
横浜市立大学大学院総合理学研究科准教授を経て、2004年からエディスコーワン大学(オーストラリア)に移り、2009年に教授となって現在に至る。専門は運動生理学。学術研究論文数は300編を超え、エキセントリック運動に伴う筋損傷研究の第一人者として世界に知られる。現在はエキセントリック運動の利点の研究を精力的に行っており、「エキセントリック体操」を世界に広める活動を行っている。著書に『ゆ~っくり座れば一生歩ける』(日本文芸社)、『筋トレ革命 エキセントリックトレーニングの教科書』(新星出版社)等。オーストラリアのパース在住。

稲見崇孝
慶應義塾大学体育研究所専任講師
2011年中京大学大学院体育学研究科(現スポーツ科学研究科)博士後期課程(健康科学系)修了。博士(体育学)。2004年愛知医科大学医学部附属運動療育センター、2013年エディスコーワン大学(オーストラリア)にて研究活動に従事したのち、2014年早稲田大学スポーツ科学学術院を経て、2017年から現職。専門は運動生理学。筋肉の硬さを画像化するラボで行うような研究と、健常者からアスリートまでの最適なトレーニング方法に関するスポーツ現場での研究などを行っている。著書に『コンカレントトレーニング-最高のパフォーマンスを引き出す「トレーニング順序」の最適解』(東洋館出版社)等。

桂良寛
工学院大学教育推進機構保健体育科准教授
2011年大阪市立大学大学院医学研究科基礎医科学専攻 都市医学大講座 運動生体医学分野博士課程修了。同年から現職。博士(医学)、健康運動指導士。専門は運動生理学で、健康寿命の延伸をテーマとし、主に中高齢者に対するエキセントリック運動の効果について、現場で運動指導をしながら研究を行っている。2018年、エディスコーワン大学(オーストラリア)にてエキセントリック運動に関する1年間の研修活動を行い、現在は、東京都町田市でエキセントリック運動教室を開催している。2021年にはNHK『ガッテン!』に出演し、体重を利用したエキセントリック運動の実演や効果について解説を行った。