創造的な教育を求めて、世界中を駆け巡る!
■「学ぶことは人類の受け継いできた本能的なスキルである。」
人類は学びを積み重ねて、さまざまな技術を磨き、進歩してきた。しかし、教育現場は人間の進歩との接触を失っている上、最先端の教育技術や理論をシェアすることも乏しいのが現状だ。
イギリスの高等学校の教師だった著者のAlexBeardは、世界20か国以上を訪問し、教育の達人たちから、人工知能を用いた学習法や幼児の脳の理解の高まりにある理論など、最先端の教育の現在地を網羅的に調査した。
例えば、アメリカ・ロサンゼルスのメルローズ小学校併設の幼稚園では「iPadのジェダイ」と呼ばれる、ウィリス先生の授業を見て、「大事なのはAIだけではなく、『人間+機械+巧みなデータ処理』」であることを気付く。
ウィリス先生のクラスでは、画用紙やクレヨンと同じようにiPadが存在している。5歳の園児を指名すると、ブルートゥースでプロジェクターに接続し、動画を流し始めた。それは絵本を紹介する簡単な動画で、自分一人で作ったという。音声が入っていなかった別の子には録音ボタンを一緒に押してあげ、音声を入れなおして再編集し、わずか2分ほどで動画を作り上げた。
ウィリス先生にiPadのよさを尋ねると、「紙飛行機をつくろう」という活動のことを聞いた。家族や図書館の本ではなかなかいい解決策がなかった。そこでiPadを使うようにサポートしたところ、フロリダの紙飛行機が大好きな7歳の子どものビデオブログが見つかり、子どもたちは紙飛行機をつくることができるようになったという。テクノロジーを使うことを前提としていなかったタスクでも、そうしたことが可能になる。
「テクノロジーは子どもができることを増やすけれど、それは教師の直接の指導も同じ。誰が、どう使うかが重要だ」。ここにいる5歳児たちは、iPadが学習への入り口であることを理解している様子だった。
■教育の最前線での共通点を明らかに
〈主な取材先〉
KSA、ガリオンズ小学校、スクール 21、KSA、キングソロモンアカデミー(以上、イギリス)、 KIPP、MIT メディアラボ、ブレイクスルー校、ペングリーン幼児センター、ハイテック・ハイ、サミット(以上アメ リカ)、ヒーデンキビィ基礎学校(フィンランド)、大学入試事情(韓国) …etc
最先端の教育現場を訪れ、いろいろな試行錯誤に触れたうえで、著者は以下の3つの共通した発想に気付く。
新たな視点で考える
能力を高める
人を思いやる
本書は、21世紀の学習を変革するためのユーザーガイドであり、私たちのより良い未来へのアクセスへのロードマップなのだ。
「いまから50年後、私たちは教師を現在の医者のように尊敬しているだろう。
(中略)教師は誇りにあふれ、自主的で高い技量を持ったプロフェッショナルであり、
学習というものに精通している。」(本文より)
〈本書で紹介される著名な教育関係者の発言〉
アンドレアス・シュライヒャー(独) PISAの生みの親 OECD教育局次長
「伝統は本当に、よい実践の敵だ!」
スガタ・ミトラ(英) 「壁の穴」実験でTED賞受賞の教育科学者 「クラウド上の学校」設立を目指す
「適切な技術的サポートがあれば、子供たちは自分で学習できる」
ジョシュア・ウォン(台湾) 雨傘革命の主導者 真の意味の学習者
「批判的でなければならない。愛する街のことを考えて」
サク・トゥオミネン(芬) フィンランドの教育プロジェクトを手がけるテレビプロデューサー
「創造性は改善への意思だ」
ブレット・シルク(米) 未来のリーダーを育てるシンギュラリティ大学の責任者
「AIが何をしているか理解しなければならない。ロボットに支配される前に」
ニコラ・サディラック(仏) 運営AIのプログラマー養成学校「42」の創設者
「伝統的な教育は創造性を奪う。大切なのはソフトウェアだ」
アンジェラ・ダックワース(米) 「やりぬく力」グリットの提唱者で、心理学者
「成績や知性とは関係ない性格が、長期的な成長には欠かせない」
フィリップ・シュミット(米) 「ハック」文化の中心・MITメディアラボ、イノベーション部門のディレクター