【GIGAスクール構想の未来】世界30か国の“先端教育”を旅して見えたこれからの「先生」の役割

「いまから50年後、 私たちは教師を現在の医者のように尊敬しているだろう」。教師の重要性を信じる著者が、最先端の教育現場を巡り、教育の本質を探っていく。

〇学校の一人一台端末に命を吹き込むのは教師

ICTを使った教育で世界に後れを取ってきた日本で、GIGAスクール構想が始まって1年。児童生徒一人に一台ずつタブレット端末等が配られ、個別最適な学びの推進などの教育効果の向上に向けて、先生や保護者の期待が高まっています。

一方で、端末は教室の充電器に「封印」されていたり、子どもが自由に扱えないルールを、教育委員会を定めていたりと、GIGAスクール構想によって、教育格差が広がる逆説的な懸念も報道されています。

GIGAスクール構想の根幹を担う、一人一台のPCの確保、それだけでは、困難な時代に立ち向かう教育を実現することはできません。

〇創造的な教育を求めて、世界中を駆け巡る!

イギリスの高等学校の教師だったアレックス・ベアードさんも、私たちと同じように21世紀の学習のあるべき姿を模索していました。学級経営がうまくいかない日々が続いていたころ、世界中の教育を見て回ることを決意します。

例えば、アメリカ。ロサンゼルスのメルローズ小学校併設の幼稚園には「iPadのジェダイ」と呼ばれる、ウィリス先生がいます。ウィリス先生のクラスでは、画用紙やクレヨンと同じようにiPadが存在しています。
ベアードさんが見学したクラスでは、5歳の園児がいとも簡単に、絵本を紹介する内容の自作の動画を、ブルートゥースでプロジェクターに映し出します。発表の中で音声が入っていなかった子に対してウィリス先生が音声を入れなおす再編集を指示すると、その子はわずか2分ほどの修正で動画を完成させました。また、「紙飛行機をつくろう」というクラスでは子どもたちは、家族や図書館にでは手に入らなかった情報をiPadを使って探し出し、紙飛行機を作ることができました。ウィリス先生は「テクノロジーは誰が、どう使うかが重要だ」とベアードさんに話します。ここにいる5歳児たちは、iPadが学習への入り口であることを理解しているのです。

ベアードさんは地球上のあらゆる大陸の学校へ行き、最新の知識を持つ授業者や研究者と出会い、最先端の教育を目にします。シリコンバレーの高度な知識を持った機械から、ソウルの大学受験事情、フィンランドの素晴らしい教師、イギリスで一番頭のいい生徒、ロボットを制作している MIT の教授や、巨大な力と戦う香港の学生など、30か国以上の様々な教育の変革が起きている現場を見て回りました。

〇最先端の教育に共通する3つの発想

最先端の教育現場を訪れ、いろいろな試行錯誤に触れ、ベアードさんは3つの共通した発想に気付きます。

1.新たな視点で考える
2.能力を高める
3.人を思いやる

一見当たり前のように思えるこの3つの共通項こそ、新しい時代を生き抜く子どもたちの教育に欠かせないものだとベアードさんは言います。

そして辿り着いたのは「私たちは学ぶために生まれてきた(Natural Born Learners)」ということ。
さあ、 ベアードさんと一緒に世界中の最先端の教育を巡る旅に出かけましょう。

[著者プロフィール]

アレックス・べアード
教師として働きながらロンドン大学教育研究所で修士号を取得。その後現場を離れ、すべての子どもが持てる資質を開花させることを目的とする、それぞれが独立した組織からなるネットワーク、ティーチ・フォー・オールに参加する。現在は世界各地で行われているすばらしい教育的取り組みを取材し、その成果を 46か国の教員、学校運営者、政策決定者らと共有している。



[書籍情報]
書 名: 最先端の教育 世界を変える学び手
著 者: アレックス・ベアード
訳 者: 岩崎晋也
判 型: 四六判
頁 数: 464ページ
発売日: 6月28日
価 格: 税込2,530円(税10%)
発行元: 東洋館出版社